人生どう切り開くか 桜井直樹氏『ヒトは一度しか死ねないのだから』

 

 皆さん、SF小説はお好きですか。

 

 私の知人でもある作家の桜井直樹氏が『ガーディアン・デ・ラ・ゲール: 〜戦争の番人』(Kindle版 2023年3月)を刊行し、ベストセラーになったのは記憶に新しいところです。それに引き続き、この度、2作目の刊行で商業出版を成し遂げられました。

 

 

『ヒトは一度しか死ねないのだから』 (みらいパブリッシング 2024年2月)

 

  前作は未来の自分が現在の自分に奇想天外な頼み事をし、それによって自分の未来を切り開くという内容でした。それに対して今作の舞台は600年後の地球です。

 

 ロボットがほとんどの仕事を請け負い、四季はなくなり、雨も降らない世界。人間にすると、表見的には安楽だけど、何のための人生か考えてしまうような社会になっています。

 

 そこでは神から見捨てられたような人類と、万能に見えるロボットが共生する灼熱地獄みたいな世の中です。

 

 どうしようもない社会ですが、主人公の少年と天才科学者の出会いで、運命が変わりはじめます。万能なロボットがいれば、人のできることはないのか、人はどう生きるべきか。人同士、ロボットと人など、いろいろな愛の形が発生します。人類はどう生きるべきか、個人として理想をどこにおくべきか考えさせる、エンタテイメントノベルの誕生です。

 

 

 表題の『ヒトは一度しか死ねないのだから』 というのは、言い換えると人生一度しかないということです。一度しかないのだから、どう生きるかが大事になるのでしょう。でもある意味、現実はこの小説をも超えている部分があるのではと思ってしまいます。2次元キャラと結婚した女性や、初音ミクと結婚した男性の話が話題になっていました。それだけ恋愛も価値観も多様化しているのでしょう。

 

 でも本書は、時代に流されるのではなく、自分の理想をしっかりもち行動することでしか理想の未来は来ないと語っているように思えます。私も理想を現状のはるか外に置き、自分も人類も輝きながら生きていける、そんな社会を目指しています。人生どう生きるか、あらためて突きつけられる刺激的な小説でした。

桜井直樹 第2作

 

 

<目次>

プロローグ~女神に託したもの~

第一章:エンカウンター・ウィズ・アウトサイダー

第二章:サーチライト・フォー・ユー

第三章:ミーティング・アンド・ミッシング

第四章:リブート・オブ・バディ

エピローグ~遺志を継ぐもの~