服部夕紀『人生は何度でも立て直せる 会計の視点で読み解く、魂と人生をつなぐ方法』

 

多くの人は、お金の話と魂の話を別々のものだと思っています。

お金は現実。魂は精神世界。

会計は数字。人生は感情。

 本書は、その境界線を鮮やかに取り払っていく一冊です。本書を読み終えたとき、私は「人生そのものが一つの会計帳簿なのかもしれない」と感じました。

 

 

 日々の選択、出会い、失敗、成功、喜び、悲しみ――。

 それらは偶然に起きているのではなく、ある法則のもとで積み重ねられ、自分自身の人生を形づくっているのです。そして著者は、その法則を理解するための道具として「会計」という視点を提示します。

 

 

お金と魂の関係

 本書の大きな特徴は、お金を単なる通貨として扱っていないことです。お金は、その人の価値観や信念、さらには魂の状態を映し出す鏡として描かれています。なぜ同じように努力していても豊かになる人と苦しみ続ける人がいるのか。なぜ収入が増えても満たされない人がいるのか。なぜ経済的には厳しくても幸福感に満ちている人がいるのか。著者は、その答えを魂のあり方に求めます。

 お金そのものに善悪はありません。お金との付き合い方の中に、その人の恐れや執着、感謝や信頼が現れるのです。つまり、お金の流れを見ることは、自分自身の内面を見つめることでもあります。会計を学ぶことが、結果として魂を知ることにつながるという視点は、本書ならではの魅力でしょう。

 

 

 

 

 

人生はなぜ「仕組み」でできているのか

 私たちは人生を感情で捉えがちです。

 運が良かった。運が悪かった。あの人のせいだ。時代が悪い。

 しかし著者は、それらの背後には必ず「仕組み」が存在すると語ります。会社経営が仕組みで動くように、人生もまた仕組みで動いている。

日々どんな言葉を使うのか。どんな人と付き合うのか。

何に時間を使うのか。何を信じて行動するのか。

 そんなことの積み重ねが未来をつくります。突然の成功も突然の失敗も、実は長い時間をかけて蓄積された結果なのです。会計では、今日の決算は過去の取引の結果として現れます。人生も同じなのです。

 今の現実は、これまでの選択の決算書なのです。だからこそ人生は立て直せます。仕組みでできているなら、仕組みを変えれば未来も変わるからです。

 本書のタイトルにある「何度でも立て直せる」という言葉には、その確信が込められています。

 

 

 

なぜ会計から人生を読み解くのか

 会計は冷たい数字の学問と思われがちです。しかし著者は、その数字の背後にある人間の営みを見ています。企業の会計が会社の健康状態を示すように、人生にも見えない会計が存在する。

与えたものと受け取ったもの。感謝したことと不満を抱いたこと。挑戦したことと逃げたこと。

 それらすべてが人生の帳簿に記録されている。

 この発想が実に興味深いのです。

 会計の本質は、お金を数えることではありません。現状を正確に把握することです。

 人生においても同じです。

 現実から目を背ける限り、人は変われません。

今どこにいるのか。何が資産で何が負債なのか。何を増やし何を手放すべきなのか。

 会計というレンズを通して見ることで、自分自身の人生の構造が見えてくるのです。

 

 

 

「カルマ」と向き合い人生を伸ばす方向

 本書ではカルマについても独特の視点が示されています。カルマというと、過去世や宿命といった神秘的なものを連想する人もいるでしょう。しかし著者の語るカルマは、もっと現実的です。

繰り返される思考。繰り返される行動。繰り返される人間関係。

同じ失敗を何度も繰り返してしまう。似たような問題に何度も直面する。

 その背景には、自分でも気づいていない思考の癖があります。それがカルマとして人生に現れるのです。カルマと向き合うとは、自分を責めることではありません。パターンを認識することです。そして新しい選択を始めることです。

 会計でいえば、赤字の原因を分析し改善策を実行するようなものです。過去を悔やむのではなく、未来の数字を変える。本書はそのための視点を与えてくれます。

 

 

 

自分とどう向き合うのか

 本書を読んで最も心に残ったのは、「自分自身を正しく見る勇気」の大切さでした。私たちは他人のことはよく見えます。しかし自分のことになると意外なほど見えていません。過小評価したり、過大評価したり。本当の強みを見失ったり。本当の課題から逃げたり。著者は、会計のように淡々と自分を見つめることを勧めます。

感情に流されず、
現実を否定せず、
あるがままを受け入れる。

 そのうえで未来に向けた選択を重ねていく。人生を立て直すとは、劇的な成功を手に入れることではありません。昨日より少しだけ良い選択をすることです。その小さな積み重ねがやがて人生全体の決算を変えていくのです。

 本書は会計の本でありながら、自己啓発書であり、人生哲学書でもあります。もし今、自分の人生が思うように進まず立ち止まっているなら、この本は優しく問いかけてくれるでしょう。

Kindle版『本気で人生を変えたいなら『本の読み方』を変えなさい』(望月俊孝 浅井真美世)

 

本は読むのではない。本に人生を動かしてもらうのである。

 

 

 世の中には読書術の本が数多くあります。しかし、その多くは「速く読む方法」や「たくさん読む方法」を教える本です。

 望月俊孝氏と浅井真美世氏の『本気で人生を変えたいなら「本の読み方」を変えなさい』は類書とは違います。

 本書が問いかけるのは、「あなたは本を読んだ後、何が変わったのですか?」という一点です。どれだけ数多くの本を読んだとしても、人生が変わらなければ意味がない。逆に、一冊との出会いが人生の方向を変えることもある。そのための実践的方法として提唱されているのが「4C速読法」です。

1)4C速読法とは何か

 4C速読法の4つのCとは、

  • Check(確認)
  • Choice(選択)
  • Chance(機会)
  • Change(変化)

を意味します。

 まず著者や目次から全体像をつかみ(Check)、自分に必要な部分を選び出し(Choice)、そこから人生を好転させるヒントを見つけ(Chance)、実際の行動へ移す(Change)。

 ここで重要なのは、「速く読むこと」が目的ではないということです。

 学校教育では、一字一句を漏らさず読むことが良い読書だと教えられてきました。しかし本書は、その思い込みを手放そうと提案します。すべてを読むのではなく、自分にとって価値ある2割を見つけ、その学びを人生に活かすことが重要だというのです。

 つまり4C速読法とは、「情報収集の技術」ではなく、「人生変革の技術」なのです。

2)もっと楽に読書するには

 本書の魅力は、「読書は苦行ではない」と教えてくれるところにあります。

本を買ったのに最後まで読めない。
積ん読が増えて自己嫌悪になってしまう
途中で飽きてしまう。

 そんな人に対して著者は、「全部読まなくてもいい」と優しく語りかけます。

 実際、多くの人が読書を続けられない理由は能力不足ではありません。完璧主義です。

最初から最後まで理解しなければならない。
全部覚えなければならない。
一冊を読破しなければならない。

 こうした思い込みが読書を苦しいものにしています。

 本書を読むと、読書はもっと自由でいいのだと気づかされます。

気になる章だけ読む。
必要な部分だけ読む。
一つでも実践できることを見つける。

それで十分なのです。

読書を「義務」から「楽しみ」へ変える発想の転換が、本書にはあります。

3)読書で人生は変わるのか

 だけでは人生は変わらない」かもしれません。

 でも「これからの行動につながる読書」は人生を変えると思います。本書もまさにその立場です。

 人の生を変えるのは知識ではありません。行動です。

 読書によって新しい考え方を知る。
 視野が広がる。
 自分の思い込みに気づく。

 そして行動が変わる。

 その結果として人生が変わるのです。歴史を振り返っても、多くの偉人たちは読書家でした。ただし彼らは本を読んで満足したのではありません。本から得た知恵を現実世界で試し、失敗し、改善し続けました。

 本書が優れているのは、読書を知識の蓄積ではなく「行動の着火剤」と位置づけている点です。読書のゴールは読了ではなく変化なのだと教えてくれます。

4)読書で新しい時代をつくる方法

 AI時代になり、情報そのものの価値は急速に下がっています。

検索すれば答えは出る。
AIに聞けば要約もできる。

 そんな時代だからこそ、人間に求められるのは「情報をどう使うか」です。

 本書が示す4C速読法は、単なる読書術を超えています。

本を通じて価値観を更新し、
他者の知恵を借り、
行動を変え、
社会に新しい価値を生み出す。

 この循環こそが、新しい時代を創る力になるのです。

 一冊の本との出会いが一人の人生を変える。
 変わった一人が周囲に影響を与える。
 その影響が社会へ広がる。

 歴史を動かしてきたのは、いつの時代もこうした「学びから始まる変化」でした。

 本書は単なる速読本ではありません。

「読む人」から「変わる人」へ。
そして「変える人」へ。

 その第一歩を示してくれる一冊です。

もし今、積ん読の山を前にため息をついているなら、本を読む前にまずこの本を読んでみてください。あなたが変えるべきなのは、読む冊数ではありません。本との向き合い方そのものなのです。

道下けーこ氏『なんちゃってアイドル』

道下けーこ氏『なんちゃってアイドル 1000人が笑った、泣いた、立ち上がった16年』kindle版

 題名から受ける印象とはうらはらに「人が自分らしく生きるとはどういうことか」を考えさせられる真剣な内容でした。

 本書の「アイドル」という言葉は、単に芸能人やアイドルだけを意味しているのではなく、「誰もが自分らしく輝ける存在である」という意味かと思いました。それは特別な才能や経歴の人だけがイキイキするのではなく、一般の人でもありのままで人に影響を与えられるという考え方です。

 また、考えさせられたのは、「成功とは何か」ということでした。地位や名声、収入などが成功の基準だけではない価値観が示されています。自分自身が納得できる人生を送り、ご縁を大切に前に進むことこそが、成功の形なのだと感じました。

 自分らしく生きることについても多くの示唆があります。他人の期待や評価を気にして、本来の自分を見失うことがあります。でも本書に登場する人々からは、自分の思いを大切にしながら生きることの意味が伝わってきます。

 また印象に残ったのは、笑顔についての考え方です。本書で描かれる笑顔は、場をとりつくろうための表面的な笑顔ではなく、人生の紆余曲折を経験したうえで生まれるもののように感じました。困難があっても前を向こうとする姿勢や、人とのつながりの中で支え合うことが、結果として笑顔につながっているように思います。自分らしく生きたいと願う人におすすめの一冊です。

片山AKIRA『あんが信じた道を行くまで ― 深夜のパン屋から始まる、小さな奇跡の物語』

 一見すると心温まる成長物語です。しかし読み進めるうちに、この作品が単なる成功物語ではなく、「人はどのようにして自分の進むべき道を見つけるのか」という人生の本質的な問いを描いた作品であることに気づきます。

 主人公の「あん」は、最初から明確な夢や使命を持っていたわけではありません。むしろ、多くの人と同じように迷い、悩み、自分の価値や可能性を見失いそうになりながら生きています。そんな彼女の人生が動き始めるのが、深夜のパン屋という小さな舞台です。

 興味深いのは、人生を変える出来事が必ずしも華やかな場所から始まるわけではないという点です。大きな成功や劇的な出会いではなく、日常の中の小さな縁や何気ない出来事が、人生の方向を変えていきます。本書はその事実を優しく教えてくれます。

 現代社会には、「自分のやりたいことが分からない」「本当にこの道でいいのだろうか」と悩む人が少なくありません。進学、就職、転職、独立、結婚、定年後の生き方――人生の節目ごとに私たちは選択を迫られます。

 しかし本書を読むと、「進むべき道は最初から見えているものではない」ということが分かります。

 あんは、未来を完璧に見通して行動しているわけではありません。一歩踏み出し、出会い、人の役に立ち、失敗しながらも前に進みます。その過程の中で、自分らしさや使命が少しずつ形になっていくのです。

 つまり、自分の道を知る方法とは、「考え続けること」ではなく、「歩き続けること」なのです。本書は、生き方に迷っている人への力強い提言でもあります。

 人生において迷うことは決して悪いことではありません。むしろ迷いは、自分らしい人生を探している証拠です。問題なのは、迷いそのものではなく、迷うあまり立ち止まり続けることです。

 あんの姿から学べるのは、「確信がなくても進んでいい」ということです。自信がついてから行動するのではなく、行動するから自信が生まれる。道が見えてから歩くのではなく、歩くから道が見えてくる。その真理が物語全体を通じて静かに語られています。

 また、この作品には「人とのつながり」が持つ力も描かれています。自分一人で人生を切り開くのではなく、誰かとの出会いによって可能性が開かれていく。人は弱い存在だからこそ支え合い、励まし合いながら前へ進めるのだというメッセージが胸を打ちます。

 『あんが信じた道を行くまで』は、夢を叶えるためのハウツー本ではありません。しかし、夢を見失いかけた人の心に静かに灯をともしてくれる物語です。もし今、「自分は何のために生きているのだろう」「このままでいいのだろうか」と悩んでいるなら、本書はきっと優しく背中を押してくれるでしょう。

 自分の人生は誰かにアドバイスしてもらうものではありません。自分の足で歩き、自分の心で感じ、自分自身が信じることで初めて道になる。

 あんが歩いたその道は、私たち一人ひとりが歩む人生そのものなのです。読後には、「まだ遅くない。私も自分の道を歩いてみよう。」そんな前向きな気持ちが静かに湧き上がってくる一冊です。私ももう一度、どう生きるかについて、自分の心と対話したいと思います。

『フットポエム - 1 詩人きみ サッカーの詩』

 

 

 最近Amazon kindle版で刊行された『フットポエム - 1 詩人きみ サッカーの詩』は、単なる「サッカー本」ではありません。

 

 ましてや試合分析や戦術解説の本でもありません。この作品は、サッカーというスポーツを通して、人間の喜び、挫折、友情、挑戦、そして生きる意味そのものを詩として描こうとした稀有の一冊です。

 

 サッカーを知っている人はもちろん、競技経験のない人でも、自分自身の人生と重ねながら読むことができます。

 

この本が心に刺さる人

特に次のような人には深く響くでしょう。

  • 夢に向かって努力している人
  • 挫折を経験したことがある人
  • 学生時代にスポーツへ打ち込んだ人
  • 子どもを応援する親や指導者
  • サッカーを愛するすべての人
  • 「頑張ることの意味」を見失いかけている人
  •  

 サッカーの試合では、勝者と敗者が必ず生まれます。

 

 しかし詩人きみは、勝敗の向こう側にある「人の心」を見つめています。ゴールを決めた瞬間の歓喜だけでなく、ベンチで出番を待つ選手の想い、敗北に涙する選手の悔しさ、仲間を信じて走り続ける姿にも光を当てています。単に勝者を賞賛するものではありません。かつて日本で流行った「勝ち組」「負け組」などというのは彼から一番遠い言葉でしょう。

 

 

 そのため読者は、「これはサッカーの詩なのに、自分の人生のことが書かれている」と感じることができるのです。

 

詩人きみの魅力

 詩人きみの作品には難解な比喩や観念的な言葉がほとんどありません。むしろ日常の言葉を用いて、人の心の奥に届く表現を生み出しています。一見すると平易です。

 

 

 しかし読み終えた後に言葉が胸に残り続けます。

これは、詩人きみ自身が人生や人間を深く見つめ続けてきたからでしょう。

 

「サッカーを描いている」のではなく、「サッカーを通して人間を描いている」のであると言えます。

 

 

文学史上の詩人との比較

金子みすゞとの共通点

 金子みすゞは、小さな存在や弱い立場の人々へ優しいまなざしを向けました。詩人きみもまた、スター選手だけではなく、目立たない選手や敗者の側に立ちます。その優しさと共感力には共通するものがあります。

 

 

相田みつをとの共通点

 もっとも近いのは相田みつをでしょう。

 相田みつをは、「つまずいたっていいじゃないか にんげんだもの」という言葉で、多くの人を励ましました。

 

 詩人きみもまた、「できない自分」「負けた自分」 「苦しんでいる自分」を否定しません。

 

 むしろ、そのまま受け入れながら前へ進む勇気を与えてくれます。ただし相田みつをが人生全般をテーマにしたのに対し、詩人きみはサッカーという具体的なフィールドを通して人生を語ります。

 

 

谷川俊太郎との共通点

 谷川俊太郎は日常の中にある普遍的な感情を鮮やかにすくい上げました。詩人きみにも同じ力があります。

 

 サッカー少年の何気ない一瞬が、読む人にとって人生の象徴へと変わるのです。ただ谷川俊太郎が哲学的な広がりを持つのに対し、詩人きみはより直接的で、読者に寄り添う温かさを持っています。

 

 

この本の価値

 近年のスポーツ本は、勝つための技術やメンタル論が中心になりがちです。しかし本書はそれと対局にあります。スポ根ものと真逆です。

「なぜ人はボールを追いかけるのか」
 「なぜ仲間とともに走るのか」
 「なぜ負けてもまた立ち上がるのか」

という根源的な問いを詩によって描いています。

 

 それはサッカーの本質であり、人間の本質でもあります。

 

 だからこそ、この本はサッカー少年だけのものではありません。人生という名のフィールドで懸命に走り続けるすべての人への応援歌なのです。

 

 

最後に

『フットポエム - 1 詩人きみ サッカーの詩』は、サッカーを愛する人への贈り物であると同時に、人生に迷い、悩み、挑戦し続ける人へのエールでもあります。

 

 相田みつをの温かさ、金子みすゞの優しさ、谷川俊太郎の日常への洞察を感じさせながらも、サッカーという世界を通して独自の詩世界を築いている点が本書の魅力です。ページ数は決して多くありません。しかし読後には、一冊の詩集以上の余韻が残ります。んサッカーが好きな人にはもちろん、「最近、心が少し疲れている」という人にも、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。私にとってもいつまでの味読したい一冊になりました。

 

望月俊孝氏『金持ちになれるかどうかは、感情が9割——最新「マネーサイコロジー」が解明したお金の正体』(ポプラ新書)

 

 「お金は感情の鏡である」——本書はその一言に尽きます。資産運用のテクニックや節約術を説く一般的なマネー本とは根本的に異なり、最新の金銭心理学(マネーサイコロジー)に基づいて「なぜお金が貯まらないのか」の本質を解き明かす一冊です。4つの問いから読み解きます。

 

  1. お金の本質とは——感情を映す鏡

 本書においてお金は、単なる通貨や数字などではありません。著者は「持ち主の感情を投影し、増幅させるエネルギー」と定義しています。欠乏感でお金に接すれば、どれほど稼いでも不安は消えない。お金そのものに善悪はなく、「お金に対してどんな感情を抱いているか」が、そのまま人生の豊かさを決定づける。お金は、自分のセルフイメージを映す最も身近なバロメーターなのです。

 

望月俊孝氏『金持ちになれるかどうかは、感情が9割』

 

  1. 真の意欲の特定——ワクワクを掘り起こす

「お金が無限にあったら何をするか」という問いを通じ、見栄や生存のための労働を削ぎ落とした純粋な意欲を見極めます。幼少期に時間を忘れて取り組んだことの中に、成功と幸福が一致するヒントが隠されています。選択の基準は「損得」ではなく「心が軽くなるか、重くなるか」という身体感覚——本書はそう提案します。

 

  1. 感謝の実利——豊かさを循環させる

 感謝は道徳的な推奨ではなく、本書では最強のマネー・ストラテジーとして扱われます。感謝することで脳の注意は「欠乏」から「充足」へシフトし、心理的な豊かさが即座に生まれます。チャンスや富が巡ってきたとき、それを素直に享受できる心理的準備が整うのです。お金は人を介して運ばれるため、感謝によって築かれる良質な人間関係は、経済的成功の盤石な土台にもなります。

 

  1. 自己肯定——収入の「器」を広げる

 セルフイメージが受け取れる報酬の上限を決めます。自分を卑下していると、大きな成功が舞い込んでも無意識にそれを手放す行動をとってしまう。些細な成功でも自分を褒めることでドーパミンが放出され、次の挑戦への原動力が維持されます。存在そのものを肯定できれば、ストレスを埋める衝動買いや見栄による支出も自然と減り、健全な財政状態が保たれます。

 

総評

 本書は「稼ぐスキル(Doing)」の前に「心のあり方(Being)」を整えることの大切さを説いた一冊です。「なぜかお金が貯まらない」「稼いでも幸せを感じられない」——その悩みの正体は財布の中ではなく、感情の中にあります。内面を整えることで経済的な豊かさが引き寄せられる。そのパラダイムシフトを体験させてくれる、実践的なガイドブックです。この一冊でお金への向き合い方が変わることは間違いありません。

 

岡田尚起・佐藤大輔『SNSを超える「第4の居場所」』アンノーンブックス

 岡田尚起・佐藤大輔『SNSを超える「第4の居場所」 インターネットラジオ局「ゆめのたね」がつくる新・コミュニティ』アンノーンブックス 2018年

 ――声が紡ぐ、温度あるコミュニティの可能性

 

はじめに

 スマートフォンを手にすれば世界中の誰とでも瞬時につながれる時代に、人はなぜ孤立を感じるのでしょうか。本書は、インターネットラジオを通じて「本物のつながり」を取り戻そうとする二人の男の奮闘を描いた書です。

 著者は岡田尚起と佐藤大輔、「ゆめのたね放送局」の共同代表のお二人です。前者はコミュニティづくりのプロを目指して大手メーカーを退社した元敏腕営業マン、後者はインターネットラジオの可能性を確信し放送局を立ち上げた行動家です。経歴は異なりますが、「人のつながりに価値を見出す」という信念において深く通底しています。 

 

『「第4の居場所」』 表紙

 

 

 

SNSは「未完のコミュニティ」である

 1989年、社会学者レイ・オルデンバーグは「第三の場(サードプレイス)」という概念を提唱しました。フランスのカフェやイギリスのパブのような、義務や強制とは無縁の、本音で語り合える空間です。SNSは現代人にとっての「第3の場」となっています。

 しかし佐藤氏はここに矛盾を見出します。「SNSは、人々とのつながりを便利にした一方で、個人の孤独感を助長させている」というのです。SNSでは投稿は推敲され、写真は加工され、「いいね」の数によって価値が測られます。SNSは「温度のある関係が薄い」のです。コミュニティの形を借りながら、個人を孤立させる装置として機能しているーーこのことが「未完のコミュニティ」の実態です。 

 

「第4の居場所」とは何か

「第3の居場所(サードプレイス)」とは、家庭(第1の居場所)、仕事場や学校(第2の居場所)に次ぐ、強制や義務ではなく自主的に参加し、共感や生きる励みが得られる場所です。本書が提唱する「第4の居場所」は、これをさらに一歩進めた概念です。著者たちの答えは明快です——「感情と感情がつながる」場所です。 

 声には、文字には宿らない温度があります。「自分の言葉で語るからこそ、聞き手の心に届く。話すことは誤魔化すことはできません」と佐藤氏は語ります。加工されない声によって感情が直接行き交う空間——それが第4の居場所の本質と言えるでしょう。 

 

ゆめのたね放送局とは

 「ご縁・応援・貢献」をテーマに、2015年6月に大阪府門真市で産声を上げたのがゆめのたね放送局です。その運営モデルは既存メディアと一線を画します。通常、メディアの運営は広告で成り立ちますが、同放送局では番組パーソナリティご自身に月会費を負担いただくことによりラジオ局を運営しています。広告主の意向に縛られず、「語りたい人」が安心して語れるプラットフォームです。 

 17歳の高校生、ひきこもり、元暴走族の経営者、性同一性障がい者、70代の高齢者まで個性豊かなパーソナリティーが集うという言葉がこの場所の本質を示しています。属性も境遇も異なる人々が「自分の声で語る」という一点において対等に並ぶ。このインクルーシブな構造こそが、ゆめのたねを単なるラジオ局ではなくコミュニティとして成立させる核心です。書中では開局に至るまでの挫折の連続も率直に語られており、この事業が洗練されたビジネスプランではなく、人を信じ続けた執念から育ったものだということが伝わってきます。 

 

ゆめのたねはどんな未来をつくるか

 本書の刊行から7年余りが経過した現在、ゆめのたねはその理念を着実に現実のものとしています。2025年5月現在、全国14か所のスタジオで1,000人以上のパーソナリティが活躍中です。書籍刊行時の561人から倍増したこの数字は、「実験」が単なる理想論でなかったことの証左でしょう。 

 著者たちが目指す未来はラジオ局の規模拡大にとどまりません。ボランティアでも、人が集まれば縁が生まれ、そこから助け合いやサポートが生まれていくという発想は、利益最大化を至上命題とする現代のビジネスモデルとは逆説的です。コミュニティが経済的価値を生むのではなく、コミュニティそのものが価値であるという発想なのです。 

 

総評

 本書は、コミュニティ論・メディア論・自己啓発が三位一体となった実践の書です。ラジオとSNSは競合より補完関係にあるとも言えます。また月会費モデルは参加者の経済的余裕に依存するという限界もあるのは確かです。

 にも関わらず、本書が提起する問いは本質的です。テクノロジーが高度に発達した社会で、人と人を本当につなぐものは何か——ゆめのたねの答えは「声」でした。孤独を感じながらも「つながり」を求めているすべての人に、本書は静かに、しかし力強く語りかけてきます。コミュニティづくりに興味のある方には是非お読みいただきたい一冊です。