地震とどう向き合うか 山下文男氏著『哀史 三陸大津波』

 

 日本は周囲を海に囲まれているだけでなく、火山も多く、世界でも有数の地震多発地帯ですね。近年でも阪神・淡路大震災東日本大震災熊本地震など記憶に新しいですね。宝永4(1707)年の富士山噴火から300年、1850年代の安政地震から170年、関東大震災から100年が経過しています。さらには南海トラフ地震た首都直下型地震の可能性もあり、地震に対する備えが欠かせないものになっています。

  

(ブックレビュー)

山下文男氏著『哀史 三陸津波 〜歴史の教訓に学ぶ〜』河出書房新社

 

 地震と関連して津波も大きな問題になります。日本全国で津波の痕跡が残されていますが、特に顕著な津波地帯で有名なのが東北地方の三陸沿岸です。この地域では史上何度も津波に襲われる「津波常襲地域」です。一旦起こると甚大な被害が発生するのですが、事態が収まると緊張感が薄れ、忘れかけた頃に次の津波が来るということの繰り返しでした。

 

 本書は1990年に刊行された『哀史 三陸津波』を2011年に復刊したものです。内容としては明治29年(1896年)の大津波昭和8年(1933年)の大津波、チリ津波(1960年)を取り上げています。三陸沿岸で居住の著者は、地を這うような現地調査や聞き込みで生々しい被害の状況を再現しています。家がながされ、親子や知人が目の前で引き裂かれる悲哀もさながら、三陸地域の立地の厳しさは想像を絶します

 

 岩手県の県庁のある盛岡は内陸にあるのですが、沿岸と盛岡の間には北上山地という険しい山塊が広がっており、道も険しく、速やかな移動が難しかったのです。それで情報伝達や物資の運搬が遅れたことも被害の拡大につながっています。

 

 その一方で、地震の政府による政治的利用の様子も指摘しています。政府による物資支援を国家への敬意、戦意高揚に利用するとともに、民間組織による救援活動を「アカ」として取り締まる様子も忘れず指摘されています。津波は自然現象ではすまない現実があることも気づかせてくれました。

 

 

(感想)

  地震を全くなくすことはできないでしょう。しかし日頃からの備えで被害が少しでも減らすことができます。地震への備えとして備蓄や建物や設備の防災、避難所などは重要です。もちろん緊急時の助け合いは欠かせません。でもその時に政府や行政がいかに住民と向き合うかももっと大切だと思います。もし政権が非常時の政治的利用だけで救済を放置したら悲惨です。そうならないようにどんな政治家を選ぶかも大切ですね。